(2)彼の話

知り合ったきっかけは、元嫁の浮気で離婚して自暴自棄になってキャバクラ遊びに狂ってた時に、たまたま寄った知り合いがマスターを務めてる立ち飲みバーに居たお客のうちの一人が彼女でした。サバサバした豪快な性格で明るく話も面白く、大いに盛り上がってそのまま流れでその日の内に抱けたから、簡単な女だな、やっぱり女なんてこんなものか、何回か抱いて自然消滅だろうななんて思ってたら、僕の顔が彼女の好みだったらしく、僕も彼女の夜の手練手管に魅了されてたのもあって、自然と二人で一緒にいる事が多くなり、彼女のアパートの更新月の時に一緒に暮らそうかという話になって、同棲する事になりました。


僕の仕事は所謂ガテン系と呼ばれる業種で朝が早く、現場によって色々な場所に行くし、夜も帰りが遅いのでご飯は全て外食で済ませてたのですが、彼女と暮らし始めて最初に驚いたのが、豪快な性格とは裏腹に炊事洗濯掃除とマメであり、そんな食生活の僕を慮って朝昼とお弁当を持たせてくれ、しかもその料理の悉くが美味しいという素晴らしさで、僕は益々彼女に惹かれたのですが、ただ一つ辛かったのは現場仕事は体力勝負なので早めに就寝したかったのに、毎日彼女が夜になると僕を求めてくる事です。それも2度3度と求めてくるので、最初の内は喜んでた僕も次第に身体が持たなくなり、同棲を始めてから半年後くらいに傷付けないように遠まわしに回数を減らすように提案したら、少し残念そうな顔をしながらそれでも笑顔で受け入れてくれたので安心しました。


が、今にして思えばそれが始まりだったのかもしれません。


同棲当初から生理前はイライラする時があった彼女ですが、それ以来あからさまに八つ当たりするようになってきて、何度お願いしてもPMSだから仕方がない、理解してくれないなんて器が小さいと一蹴され、その内に生理前で無くても僕との会話を拒むようになり、同棲が始まって1年も経つ頃には、家事は疎かになり会話もほぼ無くなった冷え切った関係になってしまいました。


何度も改善しようと話し合いを求めても一言も話さず黙ったままの彼女を見て、段々と僕も諦めてしまい現実逃避にスマホゲームに没頭するようになってしまいました。彼女は彼女で週末は殆ど友達と飲みに出掛けて朝帰りするようになってました。そんな日が続いたある日、以前彼女と彼女の友達と3人で飲んだ時があって、その時にその彼女の友達と社交辞令でLineを交換してずっと連絡無かったのに、初めてその子からLineが入ってたので見てみたら、彼女が知らない男とキスをしてる写メが添付されてました。その後に彼女は今まで色んな男と浮気をしてた事、それを知ってたけど黙ってた事、彼女が僕のアソコは小さくて満足できなかったと言ってた事、その他にも色々と彼女について書き記されており最後に今まで黙ってて申し訳なかったと謝罪が記されてました。


またか、また騙されたのか、最早怒りも無く悲しみも無く、僕の胸に去来したのはただただ圧倒的な虚無感だけでした。それから数日間は何をしていたのかも覚えてません。彼女に問い詰める気力もなかったように思います。数日経った週末、その子のLineにお礼を記して、何時ものように朝帰りしてきた彼女に別れを告げました。彼女はあっさりと了承し自分の荷物を纏めてあっという間に出て行きました。実家に戻ると言っていましたが、間違いなくあのキスをしていた男の所に行ったのでしょう。母親にも彼女を紹介しており、やっと貴方も幸せになれるねと目を赤くしながら喜んでくれた母親に僕はどうやって打ち明けたら良いのか。


彼女とは別れたよ、もう幸せを求めるのは諦めたよ、と。