ガールズバーにて

 「僕、手フェチでね。手が綺麗な人が好みでさ。昔は良くこういう夜のお店で遊んでたんだけど、ある時に僕の人生で出会った中で一番手が綺麗な子と付き合う事になって、彼女が出来てから一切夜遊びを止めて彼女一筋で過ごしてたんだ。でも彼女は僕一筋じゃなくて他の男と浮気しててさ、当時同棲してた家に早めに仕事終わって帰ったら、漫画みたいに彼女と浮気相手がヤってる最中に遭遇して、彼女の綺麗な手が浮気相手のアレを握りながら咥えてる所でさ、丁度その時仕事で使ってたシャベルを持って帰宅してたから、そのシャベルで彼女の頭ごと浮気相手のアレを叩き潰したまでは良かったんだけど、このままだと殺人罪で捕まるでしょ?だからアレを潰されて口から泡吹いて死にかけてる浮気相手と頭潰されて息絶えた彼女を彼女の車まで運んで乗せて、その日僕が仕事で行ってた建築現場まで運んで、車ごと基礎工事で掘削した所に落として、会社の生コンを流して埋めたんだ。こんな事してもどうせすぐバレるだろうなって思ったけど、杜撰な管理で有名なゼネコンだったからなのか、何事も無く工事は進んでいっててね、今でも信じられないなとは思うけど、これが今の建築業界なんだなってほっとしたような、がっかりしたような複雑な気分になったのは覚えてるよ。で、埋めた後に家に帰って飛び散った血とかを掃除しようと思ったら、ベッドの隅に彼女の右手首が落ちててさ、あの時は夢中だったけどそういえば死体を捨てる時に彼女の右手無かったな、なんて思い出して、あー、これの処理どうしようかなって思いながら彼女の右手を見てたら、生気を失っても彼女の手の美しさは変わらなくて、それからは文字通り彼女は僕の右手の恋人として、僕の性の滾りを慰めてくれてたんだけど、どんなに防腐処理を施しても結局は2週間くらいが限度で、腐り始めて使い物にならなくなったから、細かく砕いて捨てたんだ。その時の悲しみと言ったら彼女の浮気現場を目撃した時より何倍も辛くて、暫くは家に閉じこもってたんだけど、何時までも落ち込んでる訳にもいかないから、気分転換に久しぶりに飲みに行こうかなって思って、今日この店に来たんだけど、君の手、とても綺麗だよね」